3Dプリンター

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大学で、今流行の熱で樹脂を溶かしてプロットしていくタイプの3Dプリンターを導入しました.
これは、ヤマダ電機でも販売しているもので、3Dプリンターの中では安価なものになります.

3Dプリンターはここ最近ブームになりましたが、そのもの自体は大昔から存在していました.
ただ、特許切れのものを有志が製品化したのがきっかけで、安価なものが多く出回り「個人でも買える」ところがポイントになりブームになりました.


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ABSやPLAといった樹脂を、熱で溶かしながら断面図を描いてゆき、どんどんと積層していくような製作方法で、このタイプのものはエラーが多かったり積層面が荒かったりします.

大学でも、切削タイプのものや石膏パウダーを固めるもの(DMMでCMしているものと同じタイプ)を運用していますが、どれも得意不得意がありどれかが決定打ではなく、場面ごとに使い分ける必要があります.

それでいうと、この3Dプリンターの特徴は「簡単」「メンテが楽」「コストの安さ」がポイントになります.
箱から出して1時間後にはプリントを開始できるぐらい設定も楽で、ソフト等も解りやすく設定箇所も少なくなっています.
また、粉も液体も使わないので設置場所も自由に出来るし音もうるさくありません.
そういうハンドリングの良さを目の当たりにすると、なにか新しい可能性が見えてくるような気がします.

「イノベーションのジレンマ」には、イノベーションは旧来の製品の評価尺度でみると劣っているが、別の飛躍的な価値があり、旧来製品のリプレースにはならずに新しい市場を席巻するとなっていましたが、この廉価帯の3Dプリンターもその様な印象を感じます.

色々と条件を変えて、どこまで出来るのか試していきたいと思います.

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観ること

ここのところ、ブログの話題は大学関連のものが多くなります.(その他の仕事もしていますが、、、)

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学生への対応を考えて、「特別支援教育に力を発揮する神経心理学入門」という神経心理学の本を読んでいます.発達障害などの事例の本ですが、児童の振る舞いに注目するのではなく、その背景をいかに探るかという内容で興味深く読みました.

発達障害は脳に障害をもつ「状態」で、身体で言うと手が無かったり、足の動きが不自由だったりするのと似ています.ただ、脳の状態なのでそれは外見では見えにくく、外からは片腕しか無いのに、両腕で出来る作業を押しつけられたりする様な事が多々あります.片腕でなんとかそれをこなそうとしますが、どうしても無理をしてしまい、普通の人と比べると疲れてしまいやすかったり、その作業を無意識に避けようとしたり、そもそもその作業が無理だったりしてしまいます.
そういった、「ふるまい」の表層的な部分のみに注目して、そこだけを修正するのは逆にその人にとってはさらにしんどい状態に追い込むことになってしまいます.
ですので、その原因を探ってその原因に対しての対応策を考える必要を、この本では説いていました.

発達障害、特に自閉症スペクトラムは健常者とそうで無い人との境目が曖昧ですし、人も気分によってはそういう行動を起こす場合もあります.そういった場合にも、単に表層的な部分のみに対応するのでは無く、その背景を常に観ておく必要があります.
教育の世界でも「ティーチングからラーニングへ」というのがトレンドになっており、学生をアクティブラーナーに導くための教育法が必要とされています.
ただ、これは単にメソッドがあるわけでは無く、観る力をベースにどうファシリテートしていくかがポイントになります.

観るというのは単に子細に観察する、というだけでは無くて、自分と違う考え、感じ方をしている人の気持ちにどこまで寄り添えるか、ということになります.
人間はどうしても自分の経験ベースでしか物事を判断できないのですが、そこをどう他者を理解していくか、若しくは理解できないものとしてそこからどう近づいていくか、がポイントなんだろうと思います.
そこらへんが、来年の課題の一つになっています.

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どうやって学ぶか

大学の授業で、あるスキルを補講的に学び直す授業を担当しています.

その授業では、学生のレベルに差があることが予想できたので、普通に「教える」事はせずに、事前に講義内容をビデオで準備しておいて、それを自分のペースで視聴しながら課題を進めていき、解らないところを質問する形式にして自分で「学ぶ」様な授業にしました.
このような方式は初めてで、色々と改善点はありましたが授業後のアンケートでは学生の反応も良く、次回もこの方式で改良していくことになりました.

教育の現場では、MOOC(Massive open online course)というオンラインで授業を公開することに注目が集まっています.
これは、大学の講義を無料でネット上に公開して、受講とテストが修了すれば大学の公式の認定書がもらえるというもので、アメリカの大学を中心に広がりを見せています.
今回私も自分でやってみて感じましたが、ビデオの教材を準備するのは、思った以上に簡単でした.コンテンツ自体の準備は通常の授業と同様ですが、ビデオの録画、編集、レンダリングなどフリーやOS付属のソフトでほぼ完璧にこなせて、その手間も予想以上に少ないものでした.

基本的に、教育は「ティーチング」と「ラーニング」に分けて考えることが出来ます.
知識を学ぶティーチングの部分はこのようなオンラインの方が、一対多の授業形式よりは断然効率が良く、また各人の進行状況に合わせた対応が出来ます.
私の授業でも、自分に合わせて進められるので良い、という答えも多くありました.
しかし、その知識をつなぐ為に試行錯誤をして「学ぶ」=「ラーニング」の場は、オンラインではまだ難しいと思います.
大学などの人と人が対面して教える場は、その様な「ラーニング」主体の場に今後変化していくのかもしれません.

ワイヤードの記事で、伊藤穣一さんが以下の発言をしていました.

既成の地図をあてにしていると、すでにある道を一歩一歩前進することしかできなくなってしまいます。既成の権威を疑って自分で考えること、素直かつ謙虚に権威を疑うことが必要なのです。子どもたちには、そのための倫理やインスピレーションを学ぶためのメンターやロールモデルが必要で、そうした体験を提供できなければ、学校の価値は減る一方でしょう。学ぶべきは「何を学ぶか」ではなく、「どうやって学ぶか」なのです。

私の授業では、とりあえずティーチングの部分を「向こう側」にやってみましたが、今後はラーニングをどのように提供するかが課題になってきています.

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オープンデザイン

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オープンデザイン」という本を、今半分ほど読み進めています.
これは、デジタルファブリケーションをベースにモノ作りやデザイナーのあり方が変わるという事を説いた本です.この手の論評は最近の3Dプリンターブームと相まって色々とありますが、オランダの執筆者を中心に一歩踏み込んだ議論がなされているのがこの本の特徴で、たんなるお祭り騒ぎではなく、その後のムーブメントとしての定着を見越した骨太な内容になっています.

NHKのドラマの「あまちゃん」は殆ど見ていなかったのですが、たまたま見ていた際に古田新太さんが「プロでもなく、素人でもないアマチュアが素晴らしい」という主旨の台詞を話していました.
デジタルの世界では、DTPの出現以降プロと素人の境界であるアマチュアの占める割合が非常に重要になっています.フォトショップやイラストレーターなどの画像編集ソフトや、動画編集ソフト、ハイビジョン撮影できるカメラ、音楽制作ソフト、ボーカロイドなど機材、ソフト面ではプロと素人の差がなくなり、アマチュアの層が厚くなっています.そのアマチュア層が、高いクリエイションを下支えしていますし、プロとアマチュアの境も曖昧になってきています.
プロダクトの世界でも、3Dプリンターのブームや無料の3DCADなど下地が出来つつあるように感じます.
今後モノ作りのアマチュアが、単なるDIYではないプロに近い所で活躍する場面が増えてくると思います.

しかし、この本にあるように著作権の問題や、どのようなエコシステムが成立するか不明なところなど、色々と解決しなければいけない課題も山積しています.
また、あまりこういう場では議論されていないように感じて居ますが、品質管理の問題も大きいと思っています.

例えば、無料で設計図を公開したプロダクトに明らかに設計ミスがあり、それでケガをした場合にどうなるのか?同じ3Dプリンターでも、機種や製造方法、材料によっては交差や摩擦の関係で組み立てが出来なかったりなど、思いつくだけでも色々とあります.
ただ、だからダメなのではなく、新しいシステムをどう構築するかがポイントになると思います.
そういう、経験値の蓄積が今後必要になってくるのでしょう、、、

大学の設備なども利用しつつ、何かフォローをしていきたいと思っています.

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ねぶた制作

1年生向けのワークショップの佳境、ねぶた制作をしました.

これは、大学の1年生全学科を混ぜたチームを作り、それぞれが無着色のねぶたを制作するというもの.
今年のテーマは「Map」で、それをベースに色々と考えて制作します.

私の担当するチームが選んだモチーフは「鬼瓦」です.スケッチを元に1/10の粘土モデル、内部の木組みの構造モデルなど、下準備を夏休み中に学生達で行いました.
ねぶた制作直前の一週間を韓国のワークショップで不在にしており、学生達の進捗を見ることは出来ませんでしたが、かなり自主的に集まって自分たちで課題解決を行っていました.


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ワークショップなので、あまり教員が主体にはならないようにしました.こちらからは具体的な指示は出さず、TA(ティーチングアシスタント)の二回生や、学生達のリーダーと話をして場を動かすようにしていました.
途中色々と問題は発生しましたが、結構な割合で学生達が自主的に話し合って解決していったので、こちらは伴奏者として、見守る程度でたまに助言をする程度で済みました.
とはいえ、最後のクオリティの部分で息切れしてきたりと、ファシリテーションの難しさを感じるワークショップでした.

ともあれ、ほぼ学生達のみで高さ4mに近いここまで大きなねぶたを完成させたのは素晴らしいことです.完成したねぶたは1週間展示して9月末に解体をしました.
この経験を、彼らの大学生活にどのように活かしていってくれるのか楽しみです.


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韓国出張

7月、8月と続けて韓国への出張がありました.
1回目は、海外での入試のお手伝い、もう1回は昨年も行った日韓デザインワークショップです.

日韓デザインワークショップでは、韓国総合芸術学校(韓国国立の美大)の学生10名と、日本の学生10名とがお互い混じり合ってチームを組み、ワークショップを行うというものです.

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先方のキム先生は、グラフィックデザイナーで日本でも活躍されていて日本語もペラペラです.今度のソウルに出来るザハ=ハディトのデザインセンターのインフォメーションデザインを、原研哉さん達と行っているそうです.

ワークショップのテーマは「韓紙」.日本の和紙は、中国から韓国を経由してもたらされたとされていますが、韓国にも日本の和紙に相当する韓紙が存在します.楮をベースにしたものですが、やはりこちらも最近取扱量が減っているのが問題になっています.
ワークショップの前半は、韓紙の産地である全州にリサーチに行き、後半はその体験をベースに紙を使った製品の提案を行いました.


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全州では、古い伝統家屋に泊まり、周囲の町並みや韓紙の博物館などを見学、そして製紙会社の手漉きの現場も見学させて頂きました.


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漉く方向が横だったり、半自動漉きの機械があったりと、微妙に異なっていましたが、材料も漉き方もほぼ日本と同じ流し漉きで、出来ている紙も似たような印象がありました.


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後半のワークショップは実質2日で制作し、提案するというハードなものでした.日本人と韓国人混成5人でチームを作り、日韓両方のコトバでプレゼンテーションしました.また、全てのチームでプロトタイプを制作していました.

紙の文化は中国も含めて、アジアで独特の発達をしていて、その重要性に学生達が触れる良い機会になったのではないかと思っています.

韓国では、食事が安くて美味しくて、あちこちで食べ歩きをしていました.
ご飯を食べるためだけにもう一度行きたいぐらいです.

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前期の産学協同

3年生のゼミでは、産学協同テーマとしました.
相手先としては、普段のお仕事でもお付き合いのある和紙の漉き場さんにお願いをしました.

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内容としては一般的な進め方をして、事前リサーチ、現場見学、振り返り、アイデアだし、提案の順で行いました.
産学協同テーマで重要な事は、やはり現場にいかに寄り添うかということだと思います.単に提案して終わりだけでは、他で行っている仮想のテーマと何ら変わらないのでその辺の感覚が重要だと思います.
往々にしてデザイナーは作り手の発想を押しつけがちなのですが、自分が良いと思った価値観と、製造者、ユーザーの価値観は必ず「ずれ」が生じてきます.それをどう落としどころを身につけていくかが、産学協同テーマの重要なところではないかと思っています.

前期の終わりに際して、学生の提案を一冊のファイルにまとめて先方に報告してきました.
そこからが、実際のテーマの始まりであったりします.

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大学教育の目的

ここのところ、大学での仕事の比率が多くて大学の話題が続きます.

大学の教員の委員会に参加していてその中で、大学の授業の改革を検討しています.
多くの大学でFD活動として、教員の教育力を向上させる取り組みをしていますが、その延長線上にあるものになっています.

大学の役割は、主に研究と教育との2つに分かれています.私のお手伝いしている美大では主に教育に力を入れていて、このクラスでは平均的な所にあると思っています.

大学の教育面でのトレンドは、一つは経産省の「社会人基礎力」や文科省の「学士力」などに代表されるジェネリックスキルと呼ばれる、大学で学ぶ専門性以外でプロジェクトの遂行のノウハウなどの極めて定性的な能力の向上が大学教育の中で求められてきている事があります.それに関連して、学生の学びも従来の「ティーチング」ではなく「ラーニング」(アクティブラーニング(※PDFにリンク))主体に変化していきます.

大学での授業を組み立てるときは、当然ながら「何を教えるか?」が重要になります.
学科として大枠をプログラムして、詳細は個々の授業担当の教員が組み立てを行います.それに加えて、「どのように教えるか?」も次第に重要になってきています.これは、学生達がジェネリックスキルを要求されているのと同様に、教員も教育のジェネリックスキルを要求されていきているのだと思います.

産業革命以降巨大な組織を必要としていたモノ作りが、近年は小さな組織でも大手に対抗できるようになってきていてモノ作りの組織が小さくなっているのと同様、教育の単位、場面も小さく、多様化してくるように感じます.
そういった中で、デザイン教育というのも単にスケッチやソフトの使い方、デザインの考え方だけを教えるのではなく、総合的により俯瞰した体系や方法論が必要になってくるのかもしれません.

せっかく教育の現場に居ますので、その様なテーマを元に試行錯誤していきたいと思います.

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導入教育

2013年度は、大学全体で企画している1年生向けの導入教育用ワークショップ(通称マンデーワークショップ)の担当を行いました.
これは、全学科の学生混在した35名程度のクラスを編成し、月曜日を丸一日使ってワークショップを繰り返すものです.前期全体で行って夏休み明けには巨大なねぶた(着色はせずにテーマは独自のもの)を作成します.

担当の教員は、美術系の教員が多く非常勤と専任が混じった構成になっています.
プロダクトデザインでのワークショップは、今の授業の内外で良くやります.が、美術系、研究系、表現系(舞台、映画、マンガなど)の学生も混じっているので、彼らに今後の大学での学びを気付かせる必要があります.その為のワークショップのプログラム構成は試行錯誤の連続でした.

高校までの学びと大学からの学びは大きく質が異なります.高校の学びはどちらかというと「teaching」の部分が多く、教員から生徒への一方通行的な教え方がどうしても多くなってしまいます.
大学での学びは、「learning」の部分が多くなり、学生が自分から学ぶ姿勢が重要になってきます.
これは、同じ学科の中でも指向や進路の考え方が違っていること、学生の能力を平均的に上げるのでは無く個人の特性に応じて伸ばす方面を見極める必要があるからです.
当然、通常の授業の中でもその様な促しはしますが、1年の導入教育であるこのワークショップでの役割は大きいのではないかと考えています.

ワークショップでは、グループワークを中心に様々な取り組みを行いました.

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これは、大きなビニールを切ってつなぎ合わせて巨大な風船を制作するワークショップです.形状を想像して形を全員で決めて、制作して空気を入れて初めて形状が現れます.

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また、調理の出来る施設を借りて「キャラ弁」の制作も行いました.単なるキャラ弁ではなく「京都」をテーマに弁当の献立、飾り付け、お品書きのコピーも含めて考えるエクスペリエンスデザインの入り口になるように計画したワークショップです.

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映像的なものでは、段ボールでマンガの様なオノマトペを作成し、それと人物を上手く構成して写真を撮り、それをつなげてストーリーにするというワークショップを行いました.
音に関する気づきと、フォントのデザイン、映像的な構成、演出など複雑な要素が入り交じり、それぞれの専門性が必要になるグループワークです.

こちらも、今回が初めての取り組みでかなり手探りな状態でしたが、二回生のTA(ティーチングアシスタント)が優秀なこともあって、なんとか乗り切ることができました.


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2つのイベント

先月は、一つのイベントに参加して、もう一つの展示会を見学してきました.

参加したイベントは「クリアクティブ大阪」の第4回です.
こちらは大阪府の製造業の活性化プログラムで、デザイナーとの有機的なマッチングを目指すものです.
単に名刺交換会や商談会に終わらせずに、対話を促進して相互理解や目指す方向を共有しながらすすめるもので、会の趣旨自体はオーソドックスなものですが、手法が優れている為にとても面白い会になりました.
自分もパネリストとして一部だけ参加させて頂きましたが、意義深いイベントでした.

その翌日は、毎年見学をしていてたまに参加させて頂いている「京都ビジネス交流フェア」に見学に行ってきました.
これは、地元の製造業が集まる展示会形式のイベントで、目的も手法もオーソドックスなものです.
ただ、地場の会社さんが色々と出展していて、毎年拝見していると展示会で顔見知りになった方や、昔お世話になった方など本当にたくさんの方にお会いできました.

色々とイベントは多いですが、そんなに目新しいことしなくてもベーシックなところにも新しさの芽はあるのだなと感じた2つのイベントでした.

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